三角比の角度を変換する式として、以下の公式が知られています。
これらの公式は、『ある角度 \(\large{\theta}\) の三角比は、角度 \(\large{90^\circ-\theta}\) の三角比に変換できる』ということを表します。
例えば、\(\large{60^\circ}\) の三角比は、以下のように \(\large{90^\circ-60^\circ=30^\circ}\) の三角比に変換できます。
$$\large{\sin 60^\circ= \cos 30^\circ \hspace{3pt}}$$ $$\large{\cos 60^\circ= \sin 30^\circ \hspace{5pt}}$$ $$\large{\tan 60^\circ= \frac{1}{\tan 30^\circ}}$$
上記の公式を言い換えると、『\(\large{45^\circ}\) より大きい鋭角 (\(\large{45^\circ < \theta < 90^\circ}\)) による三角比は、\(\large{45^\circ}\) より小さい角度の三角比に変換できる』ことを表します。
\(\large{90^\circ - \theta}\) の三角比の公式は 三角比の定義 から簡単に導けるため、必要なときに導出できるようにすると便利です。
下図の左のように、角度\(\large{\theta}\) の直角三角形において、対辺 \(\large{a}\)、底辺 \(\large{b}\)、斜辺 \(\large{c}\) であるとします。
このとき、対辺 \(\large{a}\) と斜辺 \(\large{c}\) の間の角度は、\(\large{90^\circ - \theta}\) となります。
直角三角形を角度 \(\large{90^\circ - \theta}\) が左側になるように回転させ、回転前の三角比と比較することで、角度 \(\large{\theta}\) と \(\large{90^\circ - \theta}\) の三角比の関係が求められます。
上図に示すように、\(\large{\sin (90^\circ -\theta) =\cos \theta}\)、\(\large{\cos (90^\circ -\theta) =\sin \theta}\) となり、\(\large{\sin}\) と \(\large{\cos}\) が変換される関係にあります。
一方、\(\large{\tan}\) に関しては、\(\displaystyle \large{\tan (90^\circ -\theta) =\frac{1}{\tan \theta}}\) となり、逆数の関係にあります。
三角比の \(\large{\theta}\) と \(\large{180^\circ - \theta}\) に関しては、以下のように変換する公式があります。
これらの公式は、『ある鈍角 \(\large{180^\circ - \theta}\) の三角比は、鋭角 \(\large{\theta}\) の三角比に変換できる』ということを意味しています。
例えば、鈍角 \(\large{120^\circ}\) の三角比は、\(\large{ 120^\circ = 180^\circ - 60^\circ}\) より鋭角 \(\large{60^\circ}\) の三角比に変換することができます。
$$\large{\sin 120^\circ= \sin 60^\circ \hspace{4pt}}$$ $$\large{\cos 120^\circ= -\cos 60^\circ}$$ $$\large{\tan 120^\circ= -\tan 60^\circ}$$
\(\large{180^\circ - \theta}\) の三角比の公式も簡単に導けるため、必要なときに導出できるようにすると便利です。
三角比の座標による定義により、半径 \(\large{r}\) の円上に点\(\large{P}\)(\(\large{x,y}\))をとり、線分\(\large{\overline{AO}}\) から線分\(\large{\overline{PO}}\) までを三角比の角度 \(\large{\theta}\) とします。
ここで、\(\large{y}\)軸に関して対称となるように 座標\(\large{x}\) の符号を反転させた点\(\large{P'}\)(\(\large{-x,y}\)) をとります。この点\(\large{P'}\)(\(\large{-x,y}\)) による角度は、下図のように \(\large{180^\circ - \theta}\) となります。
このとき、点\(\large{P}\)と点\(\large{P'}\)の三角比をそれぞれ求めて比較します。
上図に示すように、\(\large{\sin (180^\circ -\theta) =\sin \theta}\) となり、\(\large{\sin}\) に関しては符号は変化しない結果となります。
一方、\(\large{\cos}\)、\(\large{\tan}\) に関しては、\(\large{\cos (180^\circ -\theta) =-\cos \theta}\)、\(\large{\tan (180^\circ -\theta) =-\tan \theta}\) となり、符号が反転することが分かります。
三角比の \(\large{90^\circ-\theta}\)、\(\large{180^\circ-\theta}\) の公式に関連した問題を解説します。
【解答と解説】
以下の三角比の \(\large{90^\circ-\theta}\) を \(\large{\theta}\) に変換する公式で変形します。
\begin{eqnarray}
\large
\sin (90^\circ - \theta)&\large=&\large \cos \theta\\
\large
\cos (90^\circ - \theta)&\large=&\large \sin \theta\\
\large
\tan (90^\circ - \theta)&\large=&\large \frac{1}{\tan \theta}\\
\end{eqnarray}
【sinの変換】
\(\large{\sin 80^\circ}\) に関しては、以下のように求めます。
\(\large{80^\circ = 90^\circ -10^\circ}\) であることから、 $$\large{\sin 80^\circ = \sin (90^\circ - 10^\circ)=\cos 10^\circ}$$ したがって、 $$\large{\sin 80^\circ = \cos 10^\circ}$$
【cosの変換】
同様に、\(\large{\cos 73^\circ}\) に関しては、\(\large{73^\circ = 90^\circ -17^\circ}\) から、
$$\large{\cos 73^\circ = \cos (90^\circ - 17^\circ)=\sin 17^\circ}$$
したがって、
$$\large{\cos 73^\circ = \sin 17^\circ}$$
【tanの変換】
同様に、\(\large{\tan 50^\circ}\) に関しては、\(\large{50^\circ = 90^\circ -40^\circ}\) から、
$$\large{\tan 50^\circ = \tan (90^\circ - 40^\circ)=\frac{1}{\tan 40^\circ}}$$
したがって、
$$\large{\tan 50^\circ =\frac{1}{\tan 40^\circ}}$$
【解答と解説】
以下の三角比の \(\large{180^\circ-\theta}\) を \(\large{\theta}\) に変換する公式で変形します。
\begin{eqnarray}
\large
\sin (180^\circ - \theta)&\large=&\large \sin \theta\\
\large
\cos (180^\circ - \theta)&\large=&\large -\cos \theta\\
\large
\tan (180^\circ - \theta)&\large=&\large -\tan \theta \\
\end{eqnarray}
【sinの変換】
\(\large{\sin 170^\circ}\) に関しては、以下のように求めます。
\(\large{170^\circ = 180^\circ -10^\circ}\)であるため、 $$\large{\sin 170^\circ = \sin (180^\circ - 10^\circ)=\sin 10^\circ}$$ したがって、 $$\large{\sin 170^\circ = \sin 10^\circ}$$
【cosの変換】
同様に、\(\large{\cos 140^\circ}\) に関しては、\(\large{140^\circ = 180^\circ -40^\circ}\)から、
$$\large{\cos 140^\circ = \cos (180^\circ - 40^\circ)=-\cos 40^\circ}$$
したがって、
$$\large{\cos 140^\circ = -\cos 40^\circ}$$
【tanの変換】
同様に、\(\large{\tan 95^\circ}\) に関しては、\(\large{95^\circ = 180^\circ -85^\circ}\)から、
$$\large{\tan 95^\circ = \tan (180^\circ - 85^\circ)=-\tan 85^\circ}$$
したがって、
$$\large{\tan 95^\circ =-\tan 85^\circ}$$