本項では以下の内容を解説しています。
数列の和 \(\large{a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n}\) は記号 \(\large{\sum}\) (シグマ)を用いて以下のように書き表すことができます。 $$\large{\sum_{k=1}^{n}a_k = a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n}$$
\(\displaystyle\large{\sum_{k=1}^{n}a_k}\) は、数列 \(\large{\{a_n\}}\) の初項から第\(\large{\hspace{1pt} n \hspace{1pt}}\)項 までの和を意味します。
例えば、自然数の偶数の数列の 初項から第\(\large{\hspace{1pt} n \hspace{1pt}}\)項 までの和は $$\large{\sum_{k=1}^{n}2k = 2+4+6+ \cdots + 2n}$$ と表します。
また、自然数の偶数のうち、第\(\large{\hspace{1pt} 3 \hspace{1pt}}\)項から第\(\large{\hspace{1pt} n \hspace{1pt}}\)項 までの数列の和は $$\large{\sum_{\hspace{1pt}\color{blue}{k=3}\color{black}{}\hspace{1pt}}^{n}2k = 6+8+10+ \cdots + 2n}$$ となります。
記号 \(\large{\sum}\) の下側の \(\large{\hspace{1pt}\color{blue}{k=3}\color{black}{}\hspace{1pt}}\) は 第\(\large{\hspace{1pt}3\hspace{1pt}}\)項からの和を求めることを意味します。
等差数列や等比数列の和などは頻繁に和の計算に使われるため、以下に示すように公式として覚えると便利です。
シグマ記号には、以下のような性質があります。
上記のシグマ記号の性質は、以下のように証明することができます。
数列 \(\large{\{a_n\}}\) と \(\large{\{b_n\}}\) の和を求めると、
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n (a_k + b_k) = \sum_{k=1}^n a_k + \sum_{k=1}^n b_k}$$ が導かれます。
また、\(\large{c}\) を定数とすると、 \begin{eqnarray} \large \sum_{k=1}^n c\hspace{1pt} a_k &=& \large c\hspace{1pt} a_1+ c\hspace{1pt} a_2 +\cdots + c\hspace{1pt} a_n\\[0.7em] &\large &\large = c\hspace{1pt}(a_1+a_2 +\cdots + a_n) \\[0.7em] &\large &\large = c \hspace{1pt}\sum_{k=1}^n a_k\\[0.7em] \end{eqnarray}
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n c \hspace{1pt}a_k = c \sum_{k=1}^n a_k}$$ が導かれます。
シグマの計算は、公式が使えるように式を変形する点がポイントになります。
例題の和は、シグマ記号の性質から以下のように変形します。 $$\large{\sum_{k=1}^n (2k+3) = 2 \sum_{k=1}^n k + 3\sum_{k=1}^n 1}$$ 次に、和の公式 \begin{eqnarray} &\large &\large \sum_{k=1}^n c = nc\\[0.7em] &\large &\large \sum_{k=1}^n k = \frac{1}{2} n (n+1)\\[0.7em] \end{eqnarray} から以下のように変形します。 \begin{eqnarray} \large 2 \sum_{k=1}^n k+ 3\sum_{k=1}^n 1 &=& \large 2 \cdot \frac{1}{2} n (n+1) + 3\cdot n\\[0.7em] &\large &\large =n(n+1) + 3n\\[0.7em] &\large &\large = n(n+4)\\[0.7em] \end{eqnarray} となります。
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n (2k+3) = n(n+4)}$$ と求められます。
本章では、シグマの公式に関する問題と解き方について解説します。
解答と解説 : 問題(1) , 問題(2) , 問題(3) , 問題(4) , 問題(5) , 問題(6)
【問題1の解答】
例題の和は、まず シグマ記号の性質から以下のように変形します。 $$\large{\sum_{k=1}^n (6k^2-1) = 6 \sum_{k=1}^n k^2 -\sum_{k=1}^n 1}$$ 次に、和の公式 \begin{eqnarray} &\large &\large \sum_{k=1}^n c = nc\\[0.7em] &\large &\large \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{1}{6} n (n+1)(2n+1)\\[0.7em] \end{eqnarray} から以下のように変形すると、 \begin{eqnarray} \large 6 \sum_{k=1}^n k^2 -\sum_{k=1}^n 1 &=& \large 6 \cdot \frac{1}{6} n (n+1)(2n+1) - n\\[0.7em] &\large &\large =n(n+1)(2n+1) -n\\[0.7em] &\large &\large = n\{ (n+1)(2n+1) -1 \}\\[0.7em] &\large &\large = n^2(2n+3)\\[0.7em] \end{eqnarray} となります。
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n (6k-1) = n^2(2n+3)}$$ と求められます。
【問題2の解答】
問題の和は、シグマ記号の中が積になっているため、シグマの公式が使えるよう和の式に変形します。
\begin{eqnarray}
\large
\sum_{k=1}^n (k+1)(k-3) &\large =&\large \sum_{k=1}^n (k^2-2k -3)\\[0.7em]
\large &\large =&\large \sum_{k=1}^n k^2 -2 \sum_{k=1}^n k -3 \sum_{k=1}^n 1\\[0.7em]
\end{eqnarray}
次に、和の公式 \begin{eqnarray} &\large &\large \sum_{k=1}^n c = nc\\[0.7em] &\large &\large \sum_{k=1}^n k = \frac{1}{2}n(n+1)\\[0.7em] &\large &\large \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{1}{6} n (n+1)(2n+1)\\[0.7em] \end{eqnarray} から以下のように変形すると、
となります。
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n (k+1)(k-3) = \frac{1}{6}n( 2n^2-3n-23 )}$$ と求められます。
【問題3の解答】
問題の和は、シグマ記号の中が積になっているため、和の式に変形します。
\begin{eqnarray}
\large
\sum_{k=1}^n k^2(k-1) &\large =&\large \sum_{k=1}^n (k^3-k^2)\\[0.7em]
\large &\large =&\large \sum_{k=1}^n k^3 - \sum_{k=1}^n k^2 \\[0.7em]
\end{eqnarray}
次に、和の公式 \begin{eqnarray} &\large &\large \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{1}{6} n (n+1)(2n+1)\\[0.7em] &\large &\large \sum_{k=1}^n k^3 = \left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\\[0.7em] \end{eqnarray} から変形すると、
となります。
したがって、 $$\large{\sum_{k=1}^n k^2(k-1) = \frac{1}{12}n(n+1)(n-1)(3n+2)}$$ と求められます。
【問題4の解答】
問題の和は、シグマの計算が 初項\(\large{(k=1)}\) からではなく、第\(\large{4}\)項からの和になっています。
シグマの公式は、初項\(\large{(k=1)}\) からの和を計算する式であるため、以下のように変形して和を求めます。 $$\large{\sum_{\hspace{1pt}\color{red}{k=4}\color{black}{}\hspace{1pt}}^n (2k-1) = \sum_{\hspace{1pt}\color{red}{k=1}\color{black}{}\hspace{1pt}}^n (2k-1) - \sum_{\hspace{1pt}\color{red}{k=1}\color{black}{}\hspace{1pt}}^3 (2k-1)}$$
上式から和を求めると、
\begin{eqnarray} \large \sum_{k=4}^n (2k-1) &\large =&\large \sum_{k=1}^n (2k-1) - \sum_{k=1}^3 (2k-1)\\[0.7em] \large &\large =&\large 2\sum_{k=1}^n k - \sum_{k=1}^n 1 -(1+3+5)\\[0.7em] \large &\large =&\large 2 \cdot \frac{1}{2}n(n+1) -n -9 \\[0.7em] \large &\large =&\large n(n+1) -n -9 \\[0.7em] \large &\large =&\large (n+3)(n-3) \\[0.7em] \end{eqnarray}【問題5の解答】
問題の和は 初項 \(\large{5}\), 公比 \(\large{2}\) の等比数列であり、シグマの公式
$$\large{\sum_{k=1}^n r^{k-1} = \frac{r^n-1}{r-1}}$$
から
\begin{eqnarray}
\large \hspace{10pt} \sum_{k=1}^n 5 \cdot 2^{k-1} &=& \large 5 \sum_{k=1}^n 2^{k-1}\\[0.7em]
&\large &\large =5\cdot \frac{2^n -1}{2-1}\\[0.7em]
&\large &\large = 5\cdot(2^n-1)\\[0.7em]
\end{eqnarray}
と求められます。
【問題6の解答】
問題の和は、シグマ記号が2つ重ねて使われています。このような場合は、内側のシグマの式から順に計算すれば和が求められます。
シグマの公式から、 $$\large{\sum_{k=1}^i k = \frac{1}{2}i(i+1)}$$ となります。
よって、問題の和は以下のように計算できます。
と求められます。
【問題7の解答】
問題の和をシグマ記号で表して、公式から計算します。
したがって、求める和 \(\large{S_n}\) は、 $$\large{S_n = \frac{1}{2}n(n+1)(n^2 +n +2)}$$ となります。
【問題8の解答】
問題の和をシグマの公式から計算しようとすると、 $$\large{\sum_{k=1}^n k \cdot 2^k}$$ の項があるため、計算することができません。
このような和を求める場合は、等比数列の証明と同じ手法により、和を求めます。
とおき、両辺に \(\large{2}\) をかけると、
となります。
(1)式-(2)式を求めると、
したがって、\begin{eqnarray} \large \hspace{10pt} -S_n &=& \large 1 + 2 \cdot(2 + 2^2 + \cdots + 2^{n-1}) - (2n-1)\cdot 2^n \\[0.7em] &\large &\large =\large 1 + 2 \cdot \frac{2 \cdot (2^{n-1}-1)}{2-1} - (2n-1)\cdot 2^n\\[0.7em] &\large &\large =\large (3-2n)\cdot 2^n-3\\[0.7em] \end{eqnarray}
したがって、求める和 \(\large{S_n}\) は、 $$\large{S_n = (2n-3)\cdot 2^n+3}$$ となります。
【問題9の解答】
問題の和を求めるために、まずは数列の一般項を求めます。
\(\large{2\hspace{1pt},\hspace{1pt}4\hspace{1pt},\hspace{1pt}6\hspace{1pt},\hspace{1pt}8,\cdots}\) は 初項 \(\large{2}\), 公差 \(\large{2}\) の等差数列であるため、一般項は $$\large{a_n = 2 + 2(n-1) = 2n}$$ となります。
また、\(\large{2\hspace{1pt},\hspace{1pt}5\hspace{1pt},\hspace{1pt}8\hspace{1pt},\hspace{1pt}11,\cdots}\) は 初項 \(\large{2}\), 公差 \(\large{3}\) の等差数列であるため、一般項は $$\large{a_n = 2 + 3(n-1) = 3n-1}$$ となります。
したがって、問題の数列の和は、以下のように表せます。
$$\large{2\cdot 2 +4 \cdot 5 +6 \cdot 8+8 \cdot 11 +\cdots + 2n \cdot (3n-1)}$$次に、上記の和をシグマ記号で表し、変形すると
したがって、問題の数列の和は $$\large{S_n = 2n^2(n+1)}$$ と求められます。
【問題10の解答】
問題の和を求めるために、まずは数列の一般項を求めます。
問題の数列は、第\(\large{\hspace{1pt}n \hspace{1pt}}\)項が 初項 \(\large{1}\), 公比 \(\large{3}\) の等比数列の和であるため、一般項は $$\large{a_n = \frac{3^n-1}{3-1}=\frac{1}{2}(3^n-1)}$$ となります。
したがって、問題の和をシグマの式で表すと、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large \hspace{10pt}S_n &=& \large \sum_{k=1}^n \frac{1}{2}(3^k-1) \\[0.7em] &\large &\large =\frac{1}{2} \sum_{k=1}^n 3^k - \frac{1}{2} \sum_{k=1}^n 1\\[0.7em] \end{eqnarray} ここで、\(\displaystyle\large{\sum_{k=1}^n 3^k}\) は 初項 \(\large{3}\), 公比 \(\large{3}\) の等比数列の和であるため、 $$\large{\sum_{k=1}^n 3^k = \frac{3 \cdot (3^n-1)}{3-1}=\frac{3}{2}(3^n-1)}$$ となります。
よって、求める和は \begin{eqnarray} \large \hspace{10pt}S_n &=& \large \frac{1}{2} \sum_{k=1}^n 3^k -\frac{1}{2} \sum_{k=1}^n 1 \\[0.7em] &\large &\large =\frac{1}{2} \cdot \frac{3}{2}(3^n-1) - \frac{1}{2}n\\[0.7em] &\large &\large =\frac{1}{4} \cdot \{3\cdot(3^n-1) - 2n \}\\[0.7em] &\large &\large =\frac{1}{4} \cdot (3^{n+1} -2n -3)\\[0.7em] \end{eqnarray} となります。