本項では以下の内容を解説しています。
漸化式とは、各項がそれより前の項によって定められる等式のことをいいます。
例えば、数列\(\large{\{a_n\}}\) が以下の漸化式によって定義されているとします。 \begin{eqnarray} && \large a_1 =\large 2\\[0.7em] && \large a_{n+1} = a_n +3 \\[0.7em] \end{eqnarray}
上記の漸化式から、\(\large{n=1\hspace{1pt},\hspace{2pt}2\hspace{1pt},\hspace{2pt}3}\) の場合を求めると \begin{eqnarray} \large a_1 &\large =&\large 2\\[0.7em] \large a_2 &\large =&\large a_1 +3 = 5 \\[0.7em] \large a_3 &\large =&\large a_2 +3 = 8 \\[0.7em] \end{eqnarray} などと数列\(\large{\{a_n\}}\) の各項を\(\large{\hspace{1pt}1\hspace{1pt}}\)通りに定めることができます。
以下のような漸化式は、初項\(\large{a\hspace{1pt}}\), 公差\(\large{d\hspace{1pt}}\) の等差数列を表します。
上記の式 \(\large{\large a_{n+1} = a_n +d}\) は 『 隣り合うの項との差分(公差)が \(\large{d}\) 』であることを表します。
つまり、上記の漸化式は等差数列の定義そのものを表しています。
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は $$\large{a_n = a + (n-1)d}$$ と表されます。
上記の漸化式は 初項が\(\large{a=5}\), 公差が\(\large{d=3\hspace{2pt}}\)の等差数列であるので $$\large{a_n = 5 + (n-1)\cdot 3 = 3n+2}$$ となります。
以下のような漸化式は、初項\(\large{\hspace{1pt}a\hspace{1pt}}\), 公比\(\large{r\hspace{1pt}}\) の等比数列を表します。
上記の式 \(\large{\large a_{n+1} = r \hspace{1pt}a_n }\) は 『 隣り合うの項との比(公比)が \(\large{r}\) 』であることを表します。
つまり、上記の漸化式は等比数列の定義そのものを表しています。
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は $$\large{a_n = a\cdot r^{n-1}}$$ と表されます。
上記の漸化式は 初項が\(\large{\hspace{1pt}a=4}\), 公比が\(\large{\hspace{2pt}r=-3\hspace{2pt}}\)の等比数列であるので $$\large{a_n = 4\cdot(-3)^{n-1}}$$ となります。
以下のような漸化式で定義される数列は 階差数列 となります。
階差数列とは、数列 \(\large{\{a_n\}}\) の隣り合う項の差 \(\large{a_{n+1}-a_{n}}\) を項とする数列\(\large{\{b_n\}}\) により定められる数列のことです。
上記の漸化式は 隣り合う項の差 \(\large{a_{n+1}-a_{n}}\) が\(\large{\hspace{1pt}n\hspace{2pt}}\)の式で表されることから、\(\large{b_n = a_{n+1}-a_{n}}\) の階差数列を表します。
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は \(\large{b_n = a_{n+1}-a_{n}}\) とおくと、\(\large{n \geqq 2}\) のとき $$\large{a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k}$$ と表されます。
階差数列型の漸化式には、後述する問題(6)のように 漸化式の添え字の違いによって間違いやすいパターンがあるため、注意が必要です。
\(\large{a_{n+1}-a_n = 2n}\) より、数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列\(\large{\{b_n\}}\) を \(\large{b_n = 2n}\) とすると、\(\large{n \geqq 2}\) のとき \begin{eqnarray} \large a_n &\large = &\large a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k\\[0.7em] &\large = &\large 1 + \sum_{k=1}^{n-1}2k\\[0.7em] &\large = &\large 1 + 2\sum_{k=1}^{n-1}k\\[0.7em] &\large = &\large 1 + 2\cdot \frac{1}{2}(n-1)\{(n-1)+1\}\\[0.7em] &\large = &\large n^2 -n +1\\[0.7em] \end{eqnarray}
上式は \(\large{a_1 = 1}\) となることから、\(\large{n=1}\) のときも成り立ちます。
したがって、\(\large{a_n = n^2 -n +1}\) と求められます。
漸化式の基本となる\(\large{3\hspace{1pt}}\)パターンの漸化式と一般項をまとめます。
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は $$\large{a_n = a + (n-1)d}$$
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は $$\large{a_n = a\cdot r^{n-1}}$$
上記の漸化式で表される数列\(\large{\{a_n\}}\) の一般項は \(\large{b_n = a_{n+1}-a_{n}}\) とおくと、\(\large{n \geqq 2}\) のとき $$\large{a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k}$$
本章では、漸化式の基本に関連する問題と解き方について解説します。
解答と解説 : 問題(1)
解答と解説 : 問題(2)
解答と解説 : 問題(3)
解答と解説 : 問題(4)
解答と解説 : 問題(5)
解答と解説 : 問題(6)
【問題1の解答】
問題の漸化式は 初項が\(\large{a=3}\), 公差が\(\large{\hspace{1pt}d=-3\hspace{2pt}}\)の等差数列であるので
$$\large{a_n = 3 + (n-1)\cdot (-3) = -3n+6}$$
となります。
【問題2の解答】
上記の漸化式は 初項が\(\large{a=-2\hspace{1pt}}\), 公比が\(\large{\hspace{1pt}r=-1\hspace{2pt}}\)の等比数列であるので
$$\large{a_n = -2\cdot(-1)^{n-1}}$$
となります。
【問題3の解答】
上記の漸化式を変形すると
$$\large{a_{n+1} = -\frac{3}{4}a_n}$$
となります。
したがって、問題の漸化式は初項が\(\displaystyle\large{\hspace{1pt}a=\frac{1}{2}}\), 公比が\(\displaystyle\large{\hspace{1pt}r= -\frac{3}{4}\hspace{1pt}}\)の等比数列であるので $$\large{a_n = \frac{1}{2}\cdot \left(-\frac{3}{4}\right)^{n-1}}$$ となります。
【問題4の解答】
\(\large{a_{n+1}-a_n = 3^n}\) より、数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列\(\large{\{b_n\}}\) を \(\large{b_n = 3^n}\) とすると、\(\large{n \geqq 2}\) のとき
\begin{eqnarray}
\large a_n &\large = &\large a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k\\[0.7em]
&\large = &\large 1 + \sum_{k=1}^{n-1}3^k\\[0.7em]
&\large = &\large 1 + \frac{3(3^{n-1}-1)}{3-1}\\[0.7em]
&\large = &\large \frac{1}{2}(3^{n}-1) \\[0.7em]
\end{eqnarray}
上式は \(\large{a_1 = 1}\) となることから、\(\large{n=1}\) のときも成り立ちます。
したがって、\(\displaystyle\large{a_n =\frac{1}{2}(3^{n}-1)}\) と求められます。
【問題5の解答】
\(\large{a_{n+1}-a_n = 6n^2+ 4n}\) より、数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列\(\large{\{b_n\}}\) を \(\large{b_n=6n^2+ 4n}\) とすると、\(\large{n \geqq 2}\) のとき
\begin{eqnarray}
\large a_n &\large = &\large a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k\\[0.7em]
&\large = &\large 3 + \sum_{k=1}^{n-1}(6k^2+ 4k)\\[0.7em]
&\large = &\large 3 + 6\sum_{k=1}^{n-1}k^2 + 4 \sum_{k=1}^{n-1} k\\[0.7em]
&\large = &\large 3+ 6 \cdot \frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+4 \cdot \frac{1}{2}(n-1)n \\[0.7em]
&\large = &\large 3+ (n-1)n(2n-1)+ 2(n-1)n \\[0.7em]
&\large = &\large 3+ 2n^3 -3n^2 + n+ 2n^2-2n \\[0.7em]
&\large = &\large 2n^3 -n^2 -n +3 \\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
上式は \(\large{a_1 = 3}\) となることから、\(\large{n=1}\) のときも成り立ちます。
したがって、\(\large{a_n =2n^3 -n^2 -n +3}\) と求められます。
【問題6の解答】
本問は 数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列\(\large{\{b_n\}}\) を \(\large{b_n = 2n}\) とするのは間違いです。
階差数列の定義は、隣り合う項との差分を項とする数列であるため、階差数列の各項 \(\large{b_1\hspace{1pt},\hspace{2pt}b_2\hspace{1pt},\hspace{2pt}b_3}\) は \begin{eqnarray} \large a_2 - a_{\color{red}{1}\color{black}{}} &\large = &\large b_{\color{red}{1}\color{black}{}} \\[0.7em] \large a_3-a_{\color{red}{2}\color{black}{}} &\large =&\large b_{\color{red}{2}\color{black}{}} \\[0.7em] \large a_4 - a_{\color{red}{3}\color{black}{}} &\large= &\large b_{\color{red}{3}\color{black}{}} \\[0.7em] \end{eqnarray} などと求められます。
すなわち、階差数列を漸化式で表す場合は 『\(\large{a_{n+1}- a_{\color{red}{n}\color{black}{}} =b_{\color{red}{n}\color{black}{}}\hspace{1pt}}\)』 や 『\(\large{a_{n}- a_{\color{red}{n-1}\color{black}{}} =b_{\color{red}{n-1}\color{black}{}}\hspace{1pt}}\)』 のように 差し引く数列\(\large{\{a_n\hspace{1pt}\}\hspace{1pt}}\)の添え字 と 階差数列\(\large{\{b_n\hspace{1pt}\}\hspace{1pt}}\) の添え字 が一致していなければいけません。
したがって、問題の式 \(\large{a_{n} -a_{n-1} = 2n}\) を変形して $$\large{a_{n+1} -a_{n} = 2(n+1)}$$ とすると 数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列\(\large{\{b_n\}}\) を $$\large{b_n = 2(n+1)}$$ とすることができます。
(もしくは、元の式 \(\large{a_{n} = a_{n-1} +2n}\) から 数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列を \(\large{b_{n-1}=2n}\) とおくと、\(\large{b_n=2(n+1)}\) となることから計算することもできます。)
\(\large{a_{n+1}-a_n = 2(n+1)}\) より、数列\(\large{\{a_n\}}\) の階差数列 \(\large{\{b_n\}}\) は \(\large{b_n = 2(n+1)}\) であるため、\(\large{n \geqq 2}\) のとき \begin{eqnarray} \large a_n &\large = &\large a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}b_k\\[0.7em] &\large = &\large 2 + \sum_{k=1}^{n-1}2(k+1)\\[0.7em] &\large = &\large 2 + 2\sum_{k=1}^{n-1}k + 2\sum_{k=1}^{n-1} 1\\[0.7em] &\large = &\large 2+ 2 \cdot \frac{1}{2}(n-1)n + 2(n-1) \\[0.7em] &\large = &\large n^2+n \\[0.7em] \end{eqnarray} となります。
上式は \(\large{a_1 = 2}\) となることから、\(\large{n=1}\) のときも成り立ちます。
したがって、\(\large{a_n =n^2 +n}\) と求められます。