本項では以下の内容を解説しています。
等差数列とは、隣り合う項との差が一定な数列\(\large{\{a_n\}}\) のことをいいます。
各項の差分は \(\large{d}\) という記号で表し、公差といいます。
等差数列の定義は公差\(\large{d}\) を用いて以下のように表されます。
例えば、以下の数列\(\large{\{a_n\}}\) は、項数が1つ増えるごとに \(\large{3}\) が足されることから、公差 \(\large{3}\) の等差数列です。 $$\large{2\hspace{1pt},\hspace{4pt}5\hspace{1pt},\hspace{4pt}8\hspace{1pt},\hspace{4pt}11\hspace{1pt},\hspace{4pt}14\hspace{1pt},\cdots}$$
また、等差数列の一般項 \(\large{a_n}\) は、初項\(\large{a}\)、公差\(\large{d}\) から以下の式により表されます。
例題の数列は、初項 \(\large{2}\), 公差が \(\large{3}\) の等差数列であるため、等差数列の公式 $$\large{a_n = a + (n-1)d}$$ から、 $$\large{a_n = 2+3(n-1)=3n-1}$$ となります。
等差数列は隣り合う項との差分が \(\large{d}\) であるため、
\begin{eqnarray}
\large
a_2 &\large =&\large a + d\\[0.7em]
\large a_3&\large =&\large a_2 + d = a + 2d \\[0.7em]
\large a_4&\large =&\large a_3 + d = a + 3d \\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
すなわち、等差数列の 第\(\large{\hspace{1pt} n \hspace{1pt}}\)項は、初項 \(\large{a}\) に \(\large{(n-1)\hspace{1pt} d}\) を足したものであることがわかります。
したがって、等差数列の一般項は、以下のように表されます。 $$\large{a_n =a + (n-1)\hspace{1pt}d}$$
等差数列の和は、以下の公式により表されます。
等差数列の和の公式 $$\large{S_n = \frac{1}{2} n \{2a + (n-1)d\}}$$ に \(\large{a=3, d=4, n=10}\) を代入して \begin{eqnarray} \large S_{10} &\large =&\large \frac{10}{2} (2 \times 3 + (10-1)\times 4)\\[0.7em] \large &\large =&\large 210\\[0.7em] \end{eqnarray}
等差数列の和の公式の導出方法について解説します。
初項\(\large{a}\), 公差\(\large{d}\), 項数\(\large{n}\), 末項\(\large{l}\) の等差数列の初項から末項までの和 \(\large{S_n}\) を求めると、 $$\large{S_n = a + (a + d) + \cdots +(l-d)+ l \hspace{5pt}\cdots (1)}$$ となります。
ここで、上記の数列の和を逆の順番に並べると、以下のようになります。 $$\large{S_n = l + (l-d) + \cdots +(a + d)+a \hspace{5pt} \cdots(2)}$$ (1)式と(2)式 を足し合わせると $$\large{2S_n = (a + l) + (a + l) + \cdots + (a + l)+ (a + l)}$$ すなわち、\(\large{2S_n}\) は \(\large{a + l}\) を \(\large{n}\) 個足し合わせたものとなります。
したがって、 $$\large{2S_n = n (a + l)}$$ つまり、等差数列の和 \(\large{S_n}\) は、以下の式により表されます。 $$\large{S_n = \frac{1}{2}n (a + l)}$$
また、末項 \(\large{l}\) は 初項\(\large{a}\)、公差\(\large{d}\) の等差数列の第\(\large{\hspace{1pt} n \hspace{1pt}}\)項であるから、 $$\large{l = a + (n-1)d}$$ であるので、 $$\large{S_n = \frac{1}{2}n \{2a + (n-1)d\}}$$ と表すことができます。
以上から、等差数列の和の公式を求めることができます。
本章では、等差数列に関する問題と解き方について解説します。
問題(1)~(4)は、等差数列の一般項に関連した問題です。
また、問題(5)~(7)は、等差数列の和の公式に関連した問題です。
【問題1の解答】
問題の数列は、初項は \(\large{a=50}\)、公差は \(\large{d=-3}\) の等差数列であり、一般項の公式
$$\large{a_n = a + (n-1)d}$$
から、
\begin{eqnarray}
\large
a_n &\large =&\large 50 + (n-1)\times(-3)\\[0.7em]
\large &\large =&\large -3n + 53 \\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
ここで、第\(\large{\hspace{1pt}30\hspace{1pt}}\)項の値を求めると、\(\large{n=30}\) とすればよいので $$\large{a_{30}=-37}$$ と求められます。
【問題2の解答】
問題の数列 \(\large{a_n}\) の隣り合う項との差分を求めると、
\begin{eqnarray}
\large
a_{n+1}-a_n &\large =&\large 9-\frac{1}{2}(n+1) - \left(9-\frac{1}{2}n \right)\\[0.7em]
\large &\large =&\large -\frac{1}{2} \\[0.7em]
\end{eqnarray}
したがって、数列\(\large{\{a_n\}}\) は 公差\(\displaystyle\large{d=-\frac{1}{2}}\) の等差数列となります。
また、初項 \(\large{a}\) を求めると、 $$\large{a = 9 -\frac{1}{2} = \frac{17}{2}}$$
したがって、数列\(\large{\{a_n\}}\) は 初項 \(\displaystyle\large{\frac{17}{2}}\), 公差\(\displaystyle\large{-\frac{1}{2}}\) の等差数列となります。
【問題3の解答】
まず、初項を \(\large{a}\)、公差を \(\large{d}\) として等差数列の一般項の公式
$$\large{a_n = a + (n-1)d}$$
を与えられた条件に当てはめると
\begin{eqnarray}
\large
70 &\large =&\large a + 2d\\[0.7em]
\large 7 &\large =&\large a +9d \\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
ここで、2式を解くと $$\large{d=-9\hspace{1pt},\hspace{3pt}a=88}$$ となります。したがって、数列の一般項は \begin{eqnarray} \large a_n &\large =&\large 88 + (n-1)\times(-9)\\[0.7em] \large &\large =&\large -9n + 97 \\[0.7em] \end{eqnarray} となります。
ここで、問題の等差数列が負となるとき、 $$\large{-9n + 97 < 0}$$ を満たすので、 $$\large{n > \frac{97}{9} = 10.7 \cdots}$$ 上式を満たす最小の正の整数\(\large{\hspace{1pt}n}\) は \(\large{n=11}\) であるため、第\(\large{11}\)項で初めて負となります。
【問題4の解答】
3つの数列の値を \(\large{x-d}\), \(\large{x}\), \(\large{x+d}\) とおき、与えられた条件を式にすると、
\begin{eqnarray}
\large
&&\large 3x = 12 \cdots (1)\\[0.7em]
\large &&\large (x-d)(x+d)x=49 \cdots (2)\\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
(1)式から、\(\large{x=4}\) と求められます。
また、(2)式に \(\large{x=4}\) を代入して、 \begin{eqnarray} \large 4(4-d)(4+d) &\large = &\large 48\\[0.7em] \large (4-d)(4+d) &\large = &\large 12\\[0.7em] \large 16-d^{\hspace{1pt}2} &\large = &\large 12\\[0.7em] \large d^{\hspace{1pt}2} &\large = &\large 4\\[0.7em] \end{eqnarray} すなわち、 $$\large{d = \pm 2}$$ したがって、問題の等差数列は、\(\large{2,\hspace{2pt}4,\hspace{2pt}6}\) もしくは、\(\large{6,\hspace{2pt}4,\hspace{2pt}2}\) となります。
つまり、求める\(\large{\hspace{1pt} 3 \hspace{1pt}}\)項の値は \(\large{2,\hspace{2pt}4,\hspace{2pt}6}\) となります。
【問題5の解答】
初項\(\large{a}\), 公差\(\large{d}\), 項数\(\large{n}\) の等差数列の和は
$$\large{S_n = \frac{1}{2} n \{2a + (n-1)d\}}$$
と表されることから、
\begin{eqnarray}
\large
S_4 &\large = &\large 2\cdot(2a + 3d) = 96 \cdots (1)\\[0.7em]
\large
S_{10} &\large = &\large 5\cdot (2a + 9d) = 120 \cdots (2) \\[0.7em]
\end{eqnarray}
となります。
(1)式と(2)式から、公差 \(\large{d}\) を求めると、 $$\large{d=-4}$$ となります。(1)式から 初項 \(\large{a}\) を求めると、 $$\large{a=30}$$ となります。したがって、求める \(\large{S_n}\) は、 \begin{eqnarray} \large S_n &\large = &\large \frac{1}{2} n \{2\cdot 30 + (n-1) \cdot (-4)\}\\[0.7em] \large &\large = &\large -2n^2 + 32n \\[0.7em] \end{eqnarray}
【問題6の解答】
問題の数列は、初項 \(\large{62}\), 公差が \(\large{-3}\) の等差数列であるため、等差数列の公式 $$\large{a_n = a + (n-1)d}$$ から、 $$\large{a_n = 62-3(n-1)=-3n + 65}$$ となります。
等差数列の和が最大となるとき、数列の項がすべて正となります。項の値が正となる条件を求めると、 \begin{eqnarray} \large -3n + 65 &\large > &\large 0 \\[0.7em] \large n &\large < &\large \frac{65}{3} = 21.6 \cdots \\[0.7em] \end{eqnarray} となります。したがって、第\(\large{21}\)項までは正の値となることから、第\(\large{21}\)項までの和が最大となります。
問題の等差数列が最大となるときの和は、等差数列の和の公式 $$\large{S_n = \frac{1}{2} n \{2a+(n-1)d\}}$$ に 初項 \(\large{a=62\hspace{1pt}}\), 項数 \(\large{n=21\hspace{1pt}}\), 公差 \(\large{d=-3}\) を代入して $$\large{\frac{1}{2} \cdot 21 \cdot (2\cdot 62 + 20\cdot(-3))= 672}$$ と求められます。
【問題7(1)の解答】
\(\large{1}\) から \(\large{100}\) までの数字のうち、\(\large{3}\) の倍数の数を書き並べると、
$$\large{3\cdot 1\hspace{1pt},\hspace{5pt}3\cdot 2 \hspace{1pt},\hspace{5pt}3 \cdot 3 \hspace{1pt},\cdots,3\cdot 33}$$
となります。
したがって、初項 \(\large{3}\), 項数 \(\large{33}\), 末項 \(\large{99}\) の等差数列の和を求めればよいので、 初項\(\large{a}\), 項数\(\large{n}\), 末項\(\large{l}\) の等差数列の和 $$\large{S_n = \frac{1}{2} n (a+l)}$$ から、 $$\large{\frac{1}{2} \cdot 33 \cdot (3+99)= 1683}$$ と求められます。
【問題7(2)の解答】
\(\large{1}\) から \(\large{100}\) までの数字のうち、\(\large{3}\) で割ると \(\large{1}\) 余る数を書き並べると、
$$\large{3\cdot 0 +1\hspace{1pt},\hspace{3pt}3 \cdot 1+1\hspace{1pt},\hspace{3pt} 3 \cdot 2+1\hspace{1pt},\cdots,3\cdot 33+1}$$
となります。
したがって、初項 \(\large{1}\), 項数 \(\large{34}\), 末項 \(\large{100}\) の等差数列の和を求めればよいので、 初項\(\large{a}\), 項数\(\large{n}\), 末項\(\large{l}\) の等差数列の和 $$\large{S_n = \frac{1}{2} n (a+l)}$$ から、 $$\large{\frac{1}{2} \cdot 34 \cdot (1+100)= 1717}$$ と求められます。