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ランベルト・ベールの法則

本項では、ランベルト・ベールの法則について解説します。

1. ランベルト・ベールの法則
- 1-1. 吸光度と透過率
- 1-2. 吸収スペクトル
参考文献

【1】ランベルト・ベールの法則

ランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer's law)とは、試料中を光が伝搬するときの、吸収による光強度の減少量を表現する法則です。

溶液中を伝搬する光強度$\hspace{2pt}\large{I}\hspace{2pt}$は、溶液中の分子の吸収により、伝搬距離と溶液の濃度に比例した割合で減少します。

溶液中の物質のモル吸光係数を$\hspace{2pt}\large{\epsilon^{*}\hspace{2pt}\mathrm{[cm^2 mol^{-1}]}}\hspace{2pt}$、溶液の濃度を$\hspace{2pt}\large{C\hspace{2pt}\mathrm{[mol\hspace{2pt}L^{-1}]}}\hspace{2pt}$としたとき、単位長さ($\hspace{2pt}\large{dL}\hspace{2pt}$)あたりの光強度$\hspace{2pt}\large{dI}\hspace{2pt}$は、モル吸光係数$\hspace{2pt}\large{\epsilon^{*}}\hspace{2pt}$と、溶液の濃度$\hspace{2pt}\large{C}\hspace{2pt}$に比例して減衰します。 $$\large{\displaystyle dI= -\epsilon^{*} C \times I dL\hspace{20pt}(1)}$$

試料に入射する光強度を$\hspace{2pt}\large{I_0}\hspace{2pt}$、試料中を$\hspace{2pt}\large{L}\hspace{2pt}$だけ伝搬したときの光強度を$\hspace{2pt}\large{I(L)}\hspace{2pt}$として、(1)式を解くことで、以下のランベルト・ベールの法則を導きます。

【ランベルト・ベールの法則】

$\hspace{2pt}\large{ \displaystyle I(L)=I_0 \hspace{2pt} e^{-\epsilon^{*} C L}\hspace{20pt}(2)}\hspace{2pt}$

ランベルト・ベールの法則は、試料に入射する光強度$\hspace{2pt}\large{I_0}\hspace{2pt}$と、試料から透過した光強度$\hspace{2pt}\large{I(L)}\hspace{2pt}$の関係を示します。

例えば、長さLのガラスセルに溶液を入れ、光強度$\hspace{2pt}\large{I_0}\hspace{2pt}$で光を入射すると、(2)式にしたがって指数関数で光強度が減少し、光強度$\hspace{2pt}\large{I(L)}\hspace{2pt}$となり透過します。

【1-1】吸光度Aと透過度T

試料に入射する光強度$\hspace{2pt}\large{I_0}\hspace{2pt}$と、試料から透過した光強度$\hspace{2pt}\large{I(L)}\hspace{2pt}$の比を取った数値を、透過度Tといいます。

$$\large{T = \frac{I(L)}{I_0}}$$

ここで、試料の透過度Tを常用対数で表した数値を、吸光度$\hspace{2pt}\large{A}\hspace{2pt}$といいます。 $$\large{A=-log_{10} \hspace{2pt} T=-log_{10}{\frac{I(L)}{I_0}}\hspace{20pt}}$$

ランベルト・ベールの法則を変形し、吸光度$\hspace{2pt}\large{A}\hspace{2pt}$をモル吸光係数$\hspace{2pt}\large{\epsilon}\hspace{2pt}$と、溶液の濃度Cで表現すると、以下のようになります。

【吸光度と透過度の関係】

$\hspace{2pt}\large{ \displaystyle A=-log_{10}{\hspace{2pt} T}=\epsilon \hspace{2pt} C L\hspace{20pt}(3)}\hspace{2pt}$

実際の実験では、透過度Tから吸光度$\hspace{2pt}\large{A}\hspace{2pt}$やモル吸光係数$\hspace{2pt}\large{\epsilon}\hspace{2pt}$を求めるため、(2)式より(3)式の形でよく使用されます。

補足【ランベルト・ベールの法則の底の変換】

(2)式の形式のランベルト・ベールの法則は、自然対数の底eにより表記されることが一般的です。

一方、(3)式の吸光度$\hspace{2pt}\large{A}\hspace{2pt}$は、入射光と透過光の関係を常用対数で表記します。このため、(3)式の導出には以下のように自然対数の底eから常用対数の底10に変換を行います。

\begin{eqnarray} \displaystyle \large I(L)&\large =&\large I_0 \hspace{2pt} e^{-\epsilon^{*}\hspace{2pt} C L} \\[0.7em] \displaystyle &\large =&\large I_0 \hspace{2pt} 10^{-\epsilon^{*}\hspace{2pt} C L \hspace{1pt} log_{10}\hspace{2pt}e}\\[0.7em] &\large =& \large I_0 \hspace{2pt} 10^{-\epsilon \hspace{2pt}C L} \end{eqnarray}

このとき、$\hspace{2pt}\large{\epsilon^{*}}\hspace{2pt}$と$\hspace{2pt}\large{\epsilon}\hspace{2pt}$の関係は以下のようになります。 $$\large{\epsilon = \epsilon^{*} \hspace{2pt} log_{10}\hspace{2pt}e=0.434 \hspace{2pt} \epsilon^{*}}$$