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組み合わせレンズの計算ツール

薄肉レンズを組み合わせたときの結像位置、合成焦点距離倍率(横倍率と縦倍率)を計算するツールです。

以下の計算ツールでは2枚の薄肉レンズを組み合わせたときの計算を行います。各パラメータの説明は後述しています。

また、ページの下部に最大10枚までの任意の枚数の組み合わせレンズの結像位置、合成焦点距離、倍率を計算するツールも作成しています。

2枚の組み合わせレンズの計算ツール

【光学系の設定】

物体距離

第1レンズの焦点距離 f1

第1-第2レンズの間隔 d  

第2レンズの焦点距離 f2

【出力の設定】

出力値の小数点以下の桁数

物体位置\(\large{s_{ob}}\) 合成焦点距離\(\large{f}\) 像位置\(\large{s_{i}}\)
像側主点位置\(\large{\Delta}\) 横倍率\(\large{\beta}\) 縦倍率\(\large{\alpha}\)

計算ツールの使い方

本計算ツールでは、空気中における2枚の薄肉レンズからなる光学系のパラメータを算出します。

【光学系の設定】で物体距離\(\large{s_{ob}}\)、薄肉レンズの焦点距離\(\large{f}\)、レンズ間隔\(\large{d}\)を入力します。

【出力の設定】で長さの単位を変更することが可能です。
『出力値の小数点以下の桁数』では、入力された桁より1つ小さい桁で出力値を四捨五入します。

(※当サイトの提供する計算結果や情報については一切責任は負いません。)

計算されるパラメータの意味と符号関係

以下の図1,2に、2枚の薄肉レンズの光学系の図を示します。 組み合わせレンズの物体位置,間隔,像位置の説明図

図1.組み合わせレンズの物体位置,間隔,像位置
組み合わせレンズの合成焦点距離,像側主点位置の説明図
図2.組み合わせレンズの合成焦点距離,像側主点位置

【物体距離\(\large{s_{ob}}\)】
入力値である物体位置\(\large{s_{ob}}\)は、物体から第1レンズまでの距離です。図1のように第1レンズの左側に物体がある場合は、正の値を入力してください。

【焦点距離\(\large{f}\)】
入力値である焦点距離は、薄肉レンズ1枚ごとの焦点距離を入力してください。負の焦点距離の場合は、負の値を入力してください。

【像距離\(\large{s_{i}}\)】
出力値である像距離\(\large{s_{i}}\)は、最終レンズから像までの距離です。図1のように、最終レンズの右側に像があるとき、正の値となります。

【合成焦点距離\(\large{f}\)】
出力値である合成焦点距離は、図2に示されているように、光学系の主点位置から焦点までの距離です。主点位置の右側に焦点があるとき、正の値となります。

【像側主点位置\(\large{\Delta}\)】
出力値である像側主点位置\(\large{\Delta}\)は、図2に示されているように、最終レンズから主点位置までの距離です。最終レンズの右側に主点があるとき、正の値となります。

【横倍率\(\large{\beta}\)】
出力値である横倍率\(\large{\beta}\)とは像の大きさの比率であり、物体の大きさが\(\large{Y_1}\)、像の大きさが\(\large{Y_2}\)のとき、\(\large{\beta = \frac{Y_2}{Y_1}}\)となります。 横倍率が正のとき正立像、負のときは倒立像が作られます。また、横倍率\(\large{\beta}\)が1より小さい場合が縮小像、1より大きい場合が拡大像になります。

【縦倍率\(\large{\alpha}\)】
出力値である縦倍率\(\large{\alpha}\)は物体の光軸方向の移動に対する像の移動量を表します。像の光軸方向の移動は、物体の移動方向と常に同じになる性質があるため、縦倍率\(\large{\alpha}\)は常に0以上の値となります。

(上記のパラメータの計算方法の詳細は後述しています。)

任意の枚数の薄肉レンズの計算ツール

本ツールは、最大10枚までの薄肉レンズで結像位置,合成焦点距離,倍率(横倍率と縦倍率)を計算するツールです。
使用しない欄を空欄とすることで、入力したレンズの枚数に応じた計算を行います。

使い方は、2枚の薄肉レンズの計算ツールと同じです。

(こちらの計算ツールでは、1枚の薄肉レンズでも計算は可能です。その場合、合成焦点距離はレンズそのものの焦点距離となります。)

【光学系の設定】

物体距離

第1レンズの焦点距離\(\large{f_1}\)

第1-2レンズの間隔\(\large{d_{12}}\)  

第2レンズの焦点距離\(\large{f_2}\)

第2-3レンズの間隔\(\large{d_{23}}\)  

第3レンズの焦点距離\(\large{f_3}\)

第3-4レンズの間隔\(\large{d_{34}}\)  

第4レンズの焦点距離\(\large{f_4}\)

第4-5レンズの間隔\(\large{d_{45}}\)  

第5レンズの焦点距離\(\large{f_5}\)

第5-6レンズの間隔\(\large{d_{56}}\)  

第6レンズの焦点距離\(\large{f_6}\)

第6-7レンズの間隔\(\large{d_{67}}\)  

第7レンズの焦点距離\(\large{f_7}\)

第7-8レンズの間隔\(\large{d_{78}}\)  

第8レンズの焦点距離\(\large{f_8}\)

第8-9レンズの間隔\(\large{d_{89}}\)  

第9レンズの焦点距離\(\large{f_9}\)

第9-10レンズの間隔\(\large{d_{9,10}}\)  

第10レンズの焦点距離\(\large{f_{10}}\)

【出力の設定】

出力値の小数点以下の桁数

物体位置\(\large{s_{ob}}\) 合成焦点距離\(\large{f}\) 像位置\(\large{s_{i}}\)
像側主点位置\(\large{\Delta}\) 横倍率\(\large{\beta}\) 縦倍率\(\large{\alpha}\)

組み合わせレンズの計算方法の説明

本章では、計算ツール内の計算式の概要を説明します。計算式や各パラメータの詳細についてはリンク先のページを参照してください。

近軸光線追跡のよる計算方法

本ツールでは、近軸光線追跡を行うことで結像位置や合成焦点距離などのパラメータを計算しています。

空気中にあるi番目の薄肉レンズの焦点距離を\(\large{f_i}\)とすると、近軸光線追跡は以下の式により与えられます。

【薄肉レンズの近軸光線追跡】

(屈折式)\(\large{\displaystyle \hspace{20pt}u'_i=u_i+h_i\frac{1}{f_i}}\)
(転送式) \(\large{\displaystyle \hspace{18pt}u_{i+1}=u'_i\hspace{25pt}}\)
\(\large{\displaystyle \hspace{60pt}h_{i+1}=h_i-d'_iu'_i}\)

ここで、\(\large{u}\)は光線の光軸からの角度、\(\large{h}\)は光線の光軸からの高さ、\(\large{d}\)はレンズの間隔を表します。
また、\(\large{u_i}\)はi番目の薄肉レンズの屈折前の角度、\(\large{u'_i}\)は屈折後の角度を表します。

例えば、2枚の薄肉レンズの場合の光線の角度\(\large{u_i}\)、高さ\(\large{h_i}\)などを図示すると以下の図3のようになります。 組み合わせレンズの近軸光線追跡の説明図

図3.2枚の組み合わせレンズの近軸光線追跡の説明

上図の2枚の組み合わせレンズの計算結果として、角度\(\large{u_1}\),高さ\(\large{h_1}\)をもった入射光が、2枚の組み合わせレンズの光学系を通過すると、角度\(\large{u'_2}\),高さ\(\large{h_2}\)の光線となるという結果が得られます。

計算された\(\large{(h_1,u_1)}\)、\(\large{(h_2,u'_2)}\)を利用し、像位置、合成焦点距離、倍率などの算出を行います。
(10枚の薄肉レンズの場合は、\(\large{(h_1,u_1)}\)、\(\large{(h_{10},u'_{10})}\)の計算結果を使用します。)

物体位置と像位置の計算方法

物体位置を\(\large{s_{ob}}\)とすると、第1レンズに入射する光線\(\large{(h_1,u_1)}\)とは以下の関係にあります。(\(\large{\tan\theta\fallingdotseq\theta}\)の近軸近似を使用しています。) $$\large{u_1 = \frac{h_1}{s_{ob}}}$$

\(\large{h_1=1}\)とすると、近軸光線追跡の初期値を\(\large{(h_1,u_1)=(1,\frac{1}{s_{ob}})}\)とすることができます。 計算ツール内では、この初期値を使用して上記の近軸光線追跡を計算しています。

また、図3の2枚の組み合わせレンズの像位置\(\large{s_i}\)は、最終レンズに屈折された光線の角度を\(\large{u'_2}\)、光線の高さを\(\large{h_2}\)とすると、以下の式で与えられます。 $$\large{s_i = \frac{h_2}{u'_2}}$$

合成焦点距離の計算

組み合わせレンズの合成焦点距離は、図4のように主点位置から焦点の位置により計算されます。 合成焦点距離と主点位置の計算の説明図

図4.2枚の組み合わせレンズの合成焦点距離と主点位置

合成焦点距離を計算する場合は、平行光を入射する必要があるため、入射光の角度を\(\large{u_1 = 0}\)として近軸光線追跡を行います。平行光を入射したときの入射光の高さ\(\large{h_1}\)と、焦点への光線の角度\(\large{u_2}\)を用いて以下の式により表されます。 $$\large{f=\frac{h_1}{u_2}}$$

主点位置の計算

像側主点位置\(\large{\Delta}\)は、図4のように最終レンズから主点位置までの距離と定義し、計算を行います。
上記のように、主点位置から焦点までの距離は合成焦点距離\(\large{f}\)の計算により得られています。また、最終レンズから焦点までの距離は、平行光を入射したときの像位置\(\large{s_i}\)から求められます。
したがって、主点位置は合成焦点距離\(\large{f}\)と平行光を入射したときの像位置\(\large{s_i}\)により、以下の式から求められます。 $$\large{\Delta = s_i - f}$$

横倍率と縦倍率の計算

横倍率\(\large{\beta}\)は物体の高さを\(\large{Y_1}\)、像の高さを\(\large{Y_2}\)としたときの以下の式で定義されます。 $$\large{\beta = \frac{Y_2}{Y_1}}$$

計算ツールで上記の横倍率を求めるために、ヘルムホルツ・ラグランジュの不変量を使用しています。
ヘルムホルツ・ラグランジュの不変量とは、第i面における屈折率\(\large{n_i}\)、光線の角度\(\large{u_i}\)、像の高さ\(\large{Y_i}\)の積が一定であることを示す式です。 $$\large{n_1 u_1 Y_1 = n_1 u'_1 Y'_1 = n_2 u_2 Y_2 = \cdots = n_i u'_i Y'_i}$$

したがって、2枚の薄肉レンズに対して以下の式が成り立ちます。 $$\large{n_1 u_1 Y_1 = n_2 u'_2 Y'_2}$$

空気中であれば\(\large{n_1=n_2=1}\)であるため、横倍率\(\large{\beta}\)は以下により求められます。 $$\large{\beta = \frac{Y'_2}{Y_1}=\frac{u_1}{u'_2}}$$

縦倍率\(\large{\alpha}\)は、横倍率の2乗により計算しています。 $$\large{\alpha = {\beta}^2}$$


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