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直線光源の照度計算ツール

蛍光灯のような直線光源に照らされた面の照度を逐点法により計算するツールです。

直線光源による法線照度\(\large{E_n}\)、水平面照度\(\large{E_h}\)、鉛直面照度\(\large{E_v}\)、直線光源の軸に平行な照度\(\large{E_y}\)を簡易に計算できます。

直線光源の照度計算

図1のように空間に直線光源がある場合の照度を計算するツールです。

原点\(\large{O}\)から高さ\(\large{h}\)の位置に、長さ\(\large{L}\)、単位長さあたり光度\(\large{I}\)の直線光源があるとき、水平面位置\(\large{(X,Y)}\)の点Pにおける照度を計算します。 直線光源による照度計算の解説図

図1.直線光源による照度計算

【光源の設定】
◆単位長さあたりの光度\(\large{I}\) 

◆直線光源の長さ\(\large{L}\)[m] 

【照度計算の位置の設定】

◆高さh    

◆水平面位置Y 

◆水平面位置X 

【出力の設定】

 出力値の小数点以下の桁数

光源の光度\(\large{I}\)
法線照度\(\large{E_n}\) 水平面照度\(\large{E_h}\) 鉛直面照度\(\large{E_v}\)
+Y成分照度\(\large{E_{y1}}\) -Y成分照度\(\large{E_{y2}}\)

(※当サイトの提供する計算結果や情報については一切責任は負いません。)

照度計算ツールの使い方

【光源の設定】では、単位長さあたりの直線光源の軸に垂直方向の光度の大きさと、入力する光度の単位を設定します。また、直線光源の長さ\(\large{L}\)を[m]単位で入力してください。

【照度計算の位置の設定】では、照度を計算する点Pの位置を設定します。
点Pの位置の指定方法には『高さh, 水平面位置(X,Y)』、『高さh, 水平面位置Y,角度θ 』の2種類がありますので、プルダウンで選択してください。

・水平面位置は図1の点Oを原点とします。したがって、水平面位置をX=0,Y=0とした場合、直線光源の端の直下における照度を計算します。
また、Y軸方向において、直線光源の端より外側の照度を計算する場合は、水平面位置Yを負の値に設定します。(もしくは、水平面位置Yを直線光源の長さ\(\large{L}\)より大きい値に設定します。)

・入力する高さ(位置)の単位はプルダウンで選択することができます。角度\(\large{\theta}\)は度数法[°]で入力してください。

・【出力の設定】では、算出する照度の単位を設定してください。

・『出力値の小数点以下の桁数』では、指定された桁数より1つ小さい桁で四捨五入を行い出力します。

・上記の設定後、『照度計算の実行』により結果を出力します。

直線光源の照度の計算方法

本章では、計算ツール内の照度計算の方法について説明します。

直線光源に照らされた照度を計算する場合、単位長さの光源により照らされる照度を計算した後、光源の長さで積分することで照度を求めます。

また、下の図2のように照度の計算位置(点P)が、ちょうど直線光源の端(Y=0)に位置しているとして計算します。直線光源の端でない場合(Y≠0)の場合も、直線光源の端(Y=0)の計算結果を利用することで求めることができます。 直線光源の照度計算の方法

図2.直線光源の照度計算の方法

直線光源の単位長さあたりの照度

まず、直線光源の単位長さあたりの照度を求めます。

長さ\(\large{L}\)の直線光源が、軸に垂直な方向に単位長さあたりの光度が\(\large{I}\)であるとします。このとき、光源の微小長さを\(\large{dl}\)とすると、角度\(\large{\alpha}\)方向の光度は\(\large{I_{\alpha}=I \cos \alpha dl}\)となります。

ここで、微小長さ\(\large{dl}\)の光源と、照度の計算位置である点Pの距離が\(\large{R}\)であるとします。

照度の逆二乗則から、微小長さの光源から点Pを照らす法線照度\(\large{d E_n}\)は以下のように求められます。 $$\large{d E_n = \frac{I \cos \alpha dl}{R^2}\cos \alpha = \frac{I \cos^2 \alpha dl}{R^2}\hspace{15pt}(1)}$$

直線光源の全体の照度

次に、直線光源の全体の照度を求めます。

直線光源の全体による照度は、(1)式を直線光源の長さで積分することで計算されます。 $$\displaystyle \large{E_n = I \int_0^{L} \frac{\cos^2 \alpha}{R^2} dl\hspace{15pt}(2)}$$

ここで、(2)式を積分するために直線光源の長さのパラメータ\(\large{l}\)を、角度\(\large{\alpha}\)に変換します。

直線光源の位置\(\large{l}\)は、直線光源の端から点Pまでの距離\(\large{p}\)、角度\(\large{\alpha}\)と以下の関係にあります。 $$\large{l = p \tan \alpha}$$ 上式を微分し、微小長さ\(\large{dl}\)を変換する式を得ます。 $$\large{dl = \frac{p}{\cos^2 \alpha}d\alpha}$$

また、微小長さの光源と点Pの距離\(\large{R}\)は以下のように表されます。 $$\large{R = \frac{p}{\cos \alpha}}$$

以上より、(2)式を角度\(\large{\alpha}\)に関する積分に変換すると、以下のようになります。 $$\displaystyle \large{E_n = \frac{I}{p}\int_0^{\alpha_0} \cos^2 \alpha d\alpha}$$ (上式の\(\large{\alpha_0}\)は、\(\large{\alpha_0 = \tan^{-1} \frac{L}{p}}\)となる値です。)

上記の積分を計算すると以下のようになります。 $$\displaystyle \large{E_n = \frac{I}{2p}(\alpha_0 + \sin \alpha_0 \cos \alpha_0 )}$$

また、直線光源の全体による水平面照度\(\large{E_h}\)、鉛直面照度\(\large{E_v}\)は以下のように計算されます。 $$\large{E_h = E_n \cos \theta}$$ $$\large{E_v = E_n \sin \theta}$$

ここで、法線照度\(\large{E_n}\)を光源の高さ\(\large{h}\)、直線光源の長さ\(\large{L}\)、水平面位置\(\large{X}\)で表すと以下のようになります。

【線光源の法線照度】
$$\displaystyle E_n=\frac{I}{2} \left(\frac{L}{h^2 + X^2 + L^2} + \frac{1}{\sqrt{h^2 + X^2}} \tan ^{-1} \frac{L}{\sqrt{h^2 + X^2}} \right)$$

また、水平面照度\(\large{E_h}\)、鉛直面照度\(\large{E_v}\)は以下のように計算されます。

【線光源の水平照度と鉛直面照度】
$$\large{E_h = \frac{h}{\sqrt{h^2 + X^2}} E_n }$$ $$\large{E_v = \frac{X}{\sqrt{h^2 + X^2}} E_n }$$

直線光源のY成分照度

次に、直線光源によるY成分の照度を求めます。

図2より、微小長さ\(\large{dl}\)によるY成分の照度\(\large{d E_y}\)は、以下のように計算されます。 $$\large{d E_y = \frac{I \cos \alpha dl}{R^2} \cos (\frac{\pi}{2}-\alpha)=\frac{I \cos \alpha dl}{R^2} \sin \alpha}$$

上記の法線照度の計算と同様に、\(\large{d E_y}\)を直線光源の長さで積分します。 $$\displaystyle \large{E_y = I \int_0^{L} \frac{\cos \alpha \sin \alpha}{R^2} dl}$$

上式を角度\(\large{\alpha}\)の積分に変換すると以下のようになります。 $$\displaystyle \large{E_y = \frac{I}{p}\int_0^{\alpha_0} \cos \alpha \sin \alpha d\alpha}$$

上記の積分を計算すると以下のようになります。 $$\large{E_y = \frac{I}{2p}\sin^2 \alpha_0}$$

ここで、直線光源のY成分照度\(\large{E_y}\)を、光源の高さ\(\large{h}\)、直線光源の長さ\(\large{L}\)、水平面位置\(\large{X}\)で表すと以下のようになります。

【直線光源のY成分照度\(\large{E_y}\)】
$$\displaystyle \large{E_n = \frac{I}{2 \sqrt{h^2 + X^2}} \frac{L^2}{h^2 + X^2 +L^2}}$$

照度の計算位置が直線光源の端でない場合

上記の計算は、照度の計算位置(点P)が直線光源の端に位置している場合の計算です。
本章では、点Pの位置が直線光源の端から外れた場合や、中間の位置にある場合の照度の求め方を解説します。 直線光源の端から外れた場合と中間の場合の照度の計算方法

図3.(左)光源の端より外側 (右)光源の中間

図3(左)のように、直線光源の端から離れた位置の照度を計算する場合は、長さ\(\large{L_1}\)、\(\large{L_2}\)の照度(\(\large{E_n,E_h,E_v,E_y}\))を計算し、引き算することで照度を求めます。

例えば、長さ\(\large{L_1}\)、\(\large{L_2}\)の法線照度の計算結果がそれぞれ\(\large{E_{n1}}\)、\(\large{E_{n2}}\)とすると、直線光源の端から離れた位置の法線照度は以下のようになります。 $$\large{E_n = E_{n1} - E_{n2}}$$

一方、図3(右)のように、直線光源の中間で照度を求める場合、長さ\(\large{L_1}\)、\(\large{L_2}\)の照度(\(\large{E_n,E_h,E_v,E_y}\))を計算し、足し算することで照度を求めます。

例えば、長さ\(\large{L_1}\)、\(\large{L_2}\)の法線照度の計算結果がそれぞれ\(\large{E_{n1}}\)、\(\large{E_{n2}}\)とすると、直線光源の中間の位置の法線照度は以下のようになります。 $$\large{E_n = E_{n1} + E_{n2}}$$

ただし、Y成分照度\(\large{E_y}\)だけは\(\large{L_1}\)、\(\large{L_2}\)の照度が逆方向であるため、足し算ではなく、+Y方向と-Y方向それぞれに照度を持つことになります。
(本計算ツールに、Y成分照度\(\large{E_y}\)にのみ出力欄が2箇所あるのは、+Y方向と-Y方向の2方向の照度を表示するためです。)

参考文献

・(1)社団法人 照明学会『大学課程 照明工学(新版)』株式会社オーム社, 平成17年3月31日 第1版第8刷 発行,4章 照明計算 pp86~90


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