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波数とは

本項では以下の内容を解説しています。

  • ・波数の意味と定義
  • ・波数の変換式(波長や周波数、光子エネルギー)

【1】波数とは

波数(wave number)とは、『単位長さあたりの波の数』もしくは、『単位長さあたりの波の数の \(\large{2 \pi}\) 倍』により定義される量です。

分光学の分野では、波数の記号を \(\large{\overline{\nu}}\) と記述します。
波数\(\large{\overline{\nu}}\) は波長\(\large{\lambda}\) の逆数により計算されます。単位として [\(\large{cm^{-1}}\)] を使用し、カイザーといいます。 $$\large{\overline{\nu} = \frac{1}{\lambda}[cm^{-1}]}$$

一方、正弦波など振動現象を記述する場合には、波数の記号を \(\large{k}\) と記述します。波数の単位には、\(\large{[rad/m]}\) を使用します。

前記の \(\large{\overline{\nu}}\) と区別するために、波数\(\large{k}\) は 角波数といわれることもあります。

波数\(\large{k}\) は 波長\(\large{\lambda}\) の逆数の \(\large{2 \pi}\) 倍により計算されます。 $$\large{k = \frac{2 \pi}{\lambda} [rad/m]}$$

【2】波数の変換式

波数\(\large{\overline{\nu}}\) は分光学の分野で光子エネルギーや周波数、波長を表す値として使用されます。

光子エネルギーは、光の振動数\(\large{\nu}\) とプランク定数\(\large{h}\) により、計算されます。
$$\large{E = h \nu\hspace{20pt}(1)}$$ また、光速\(\large{c}\)、周波数\(\large{\nu}\)、波長\(\large{\lambda}\) には以下の関係があります。 $$\large{c = \nu \lambda\hspace{20pt}(2)}$$ したがって、(1)と(2)式から、波数\(\large{\overline{\nu}}\) と光子エネルギー\(\large{E}\)、周波数\(\large{\nu}\)、波長\(\large{\lambda}\) は以下の式により計算されます。

【波数\(\large{\overline{\nu}}\)の関係式】

$$\large{E = h \nu = \frac{c h}{\lambda} = ch \times \overline{\nu}}$$

・波数と波長,周波数の計算例

波数 \(\large{\overline{\nu}=2 \times 10^4[cm^{-1}]}\) をもつ、光の波長\(\large{\lambda}\hspace{1pt}[nm]\) と、周波数\(\large{\nu\hspace{1pt}[Hz]}\) を求めます。

波長\(\large{\lambda}\) と 波数\(\large{\nu}\) は以下の関係にあります。 $$\large{\lambda = \frac{1}{\overline{\nu}}=\frac{1}{2 \times 10^4}}$$ したがって、波長\(\large{\lambda}\) は以下のように計算されます。(\(\large{1[nm]=1\times 10^{-9}[m]}\) の関係があります。) $$\large{\lambda = 5 \times 10^{-5}[cm]=500[nm]}$$

また、周波数\(\large{\nu}\) と 波数\(\large{\overline{\nu}}\) は以下の関係にあります。 $$\large{\nu = c \hspace{1pt}\overline{\nu}}$$ 光速\(\large{c=3.0 \times 10^8[m/s]}\) から、以下のように計算されます。 $$\large{\nu = 3.0 \times 10^8 [m/s] \times 2 \times 10^4[cm^{-1}] }$$ したがって、周波数\(\large{\nu}\) は以下のように求められます。 $$\large{\nu \approx 6.0 \times 10^{14}[Hz]}$$

・波数と光子エネルギーの計算例

波数\(\large{\overline{\nu}=2 \times 10^4[cm^{-1}]}\) をもつ、光の光子エネルギー \(\large{E}[J]\) を求めます。

光子エネルギー\(\large{E}\) は以下のように計算されます。 $$\large{E = ch \times \overline{\nu}}$$ 上式に光速(\(\large{c=3.0 \times 10^8 [m/s] }\)) と、プランク定数(\(\large{h=6.6\times10^{-34}[J \cdot s] }\)) の値を入れると、光子エネルギー\(\large{E}\) は以下のように求められます。 $$\large{E \approx 4.0 \times 10^{-19}[J]}$$

【3】波数kの変換式

波数\(\large{k}\) は正弦波の式中でよく使用されるため、波の速度\(\large{v}\) や 振動数\(\large{\nu}\)、周期\(\large{T}\) を 波数\(\large{k}\) と関連付ける式がよく使用されます。

波の周波数\(\large{\nu}\) に \(\large{2 \pi}\) をかけた値を角周波数\(\large{\omega}\) といいます。 $$\large{\omega = 2 \pi \nu}$$

波の速度\(\large{v}\)、周波数\(\large{\nu}\)、波長\(\large{\lambda}\) の関係式 (\(\large{v = \nu \lambda}\)) を変形すると、波の速度\(\large{v}\)、波数\(\large{k}\)、角周波数\(\large{\omega}\) の関係式が導かれます。 $$\large{v = \nu \lambda = \frac{\omega}{2 \pi} \times \frac{2 \pi}{k}=\frac{\omega}{k}}$$

また、波が1波長分だけ進行する時間を周期\(\large{T}\) といいます。波の速度\(\large{v}\) は、波長\(\large{\lambda}\) を 周期\(\large{T}\) で割った値に等しいため、以下の式が成り立ちます。 $$\large{v = \frac{\lambda}{T} =\frac{\omega}{k}}$$

【補足】波数kはなぜ2πが必要なのか

波数\(\large{k}\) は 波長\(\large{\lambda}\) の逆数の \(\large{2 \pi}\) 倍により定義されます。 $$\large{k = \frac{2 \pi}{\lambda} [rad/m]}$$

波数\(\large{k}\) の \(\large{2 \pi}\) はなぜ必要なのでしょうか。

数学の三角関数は、変数\(\large{\theta}\) を 弧度法によるラジアン [rad] を単位として記述します。 $$\large{f(\theta)= A \sin \theta \hspace{20pt}(1)}$$

一方、物理的な振動現象を正弦波で記述する場合は、ある位置\(\large{x}\) における変位を対象にするため、三角関数の変数を 位置 \(\large{x\hspace{2pt}}\)[\(\large{m}\)] にとることが一般的です。

そのため、物理的な振動現象を、数学の三角関数で表すときは、位置\(\large{x\hspace{2pt}}\)[\(\large{m}\)] を 位相 \(\large{\theta\hspace{2pt}}\)[rad] に変換する必要があります。

(1)式と下の(2)式を見比べると分かるように、正弦波における波数\(\large{k}\) は、位置\(\large{x\hspace{2pt}}\)[\(\large{m}\)] を 位相 \(\large{\theta \hspace{2pt}(=kx)}\) [rad] に変換する役割を持っています。 $$\large{f(x)= A \sin (k x) \hspace{20pt}(2)}$$

ここで、(1)式の sin関数は、位相\(\large{\theta}\) に対して \(\large{2 \pi}\) の周期性を持っている関数です。一方、(2)式の正弦波は、位置\(\large{x}\) に対して波長\(\large{\lambda}\) の周期性を持っています。

先述したように、波数は 位置\(\large{x}\) を 位相\(\large{\theta}\) に変換する係数なので、1周期あたりの位相変化量 (\(\large{2 \pi}\)) を、1周期あたりの位置変化量 (\(\large{\large{\lambda}}\)) で割った値が 波数\(\large{k}\) となります。 $$\large{k = \frac{2 \pi}{\lambda}}$$

以上から、波数\(\large{k}\) の式に現れる \(\large{2 \pi}\) とは、位置を位相に変換するときに必要となる、三角関数の1周期あたりの位相変化量 \(\large{2 \pi}\) を意味します。


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